2024.02.07
社長Blog
思い

デザイナー転身の
きっかけの1つとなった
ジョルジュ・ブラック
1/28まで国立西洋美術館で開催された「キュビスム展-美の革命」。
最終日前日、滑り込みで行ってきました。観に行った理由のひとつとして、キュビスムそのものが好きというより、ジョルジュ・ブラックが好きだったからです。
デザイナーをめざす原点となったジョルジュ・ブラック
1988年に初めてブラック展を観に行って衝撃を受け、「木の葉の中の鳥」のポスターを購入して自分の部屋にいまだに飾っています。特にブラックの鳥モチーフの絵が好きですが、グラフィックデザインに通じる構成で、私がグラフィックデザインを意識することになった頃に、かなり影響を受けた展示会でした。デザイナーをめざす原点といっても過言でもありません。
キュビスム展から学んだこと
今回の展示はキュビスムの変遷を14章にまとめており、大変見ごたえのある展示でした。序章はキュビスムの源泉となったセザンヌ、ゴーギャン、アンリ・ルソー。そこが源泉なのか、と驚きつつ、3章でキュビスム創始者であるピカソとブラックの作品を見ると1章で紹介された画家たちから影響を受けていることを感じ納得しました。その後ピカソとブラックお互いに交流を深め共同でキュビスムを高めていくのですが、呼応した作品が多く見分けのつかないようなそっくりな作品も対比して展示されていて、2人の仲の良さが伺え興味深かったです。盗作ではなく「呼応」しながら2人でこの革命的な表現を確立していくという関係性だったということを改めて知りました。
左がピカソ「静物、瓶」、右がブラック「フォックス」
ブラック「ギターを弾く女性」
ピカソ「ヴァイオリン」
そこからさらにドローネーへの展開、シャガールたちによる深化など・・。建築で有名なコルビュジエの絵画も展示されていました。
キュビスムは、伝統的で写実的な表現から脱却し幾何学的に平面化された形を用いて画面を構成する、当時としては革命的で実験的な試み。見たままではなく、一旦分解して要素を新たな観点で再構築していく考え方が、普段手がけているクリエイティブの構築方法にも通じると感じ、とても勉強になりました。
このように建築やデザインにも大きく影響を与えていると感じました。私が好きな作風のグリスをはじめとし、いくつか印象的だった作品をご紹介します。どことなくグラフィックデザインの着眼や手法を感じる作品です。
グリス「ギター」
シャガール「キュビスムの風景」
コルビュジェ「静物」
私たちの仕事と共通する部分
私たちが普段手がけているクリエイティブの仕事は、いわゆる表面的なイメージで判断してはダメで、先入観を捨ててもう一度自分であらゆる情報を入手しその本質を見極め、課題を明確にした上で、どのように伝わるように伝えていくのか、ということを考えて再構築しています。つまりキュビスムの「見たままを表現せず、新たな観点で再構築する」という部分においては、通じるところがあると考えています。それと、ピカソとブラックが共同でキュビスムを高めていったことは、この仕事におけるチームワークでアウトプットの精度を高める作業にも共通すると思いました。
とはいえ、私たちの仕事はアートではない
前述の通り、私自身にとってジョルジュ・ブラックが今の仕事に就くまでのきっかけになったのは事実ですし、キュビスムと普段のクリエイティブの仕事と通じるところもあります。
ですが、アート(芸術)と私たちの仕事は全く違うもの だと考えています。
「自分のやりたいことを表現する」がアートだとすると、私たちの仕事は全く逆です。顧客や他人がやりたいことを実現させる、つまり「顧客の課題解決」が基本だからです。デザインにしてもコピーにしても、先入観を捨てて俯瞰しながら題材やモチーフを構築していく作業はありますが、全ては「顧客の課題解決」に結びつくのか?と問いながら行っています。
「自分のやりたいこと」を自由に表現するのでは全くないと考えています。そのマインドがある限り、この仕事をしていくのは難しいでしょう。「自分の思い通りにならない仕事が嫌だ」と不満を口にする同業者に遭遇するたび「この仕事でなく、アーティストになればいいのに」と思ってしまいます。(厳密に言うと、アーティストも売れたり人々に受け入れられるために、完全な自己表現ではない場合もありますから、「自己表現のためなら売れなくてもいいアーティスト」が正しいかもしれません)
アート表現やライブでの実体験の大切さ
いつもアートの展示を見るときは、先入観を取り払った発想や、着眼や考え方を学ぶようにしていますが、明らかに仕事とは線引きしています。構築のプロセスには生かすが、目的が「自分のため」ではなく「顧客の課題解決のため」という違いだと思っています。
顧客の課題解決を的確に進めていくための秘訣は「経験値を高めること」です。しかもその経験値は「自分の視点に変化をもたらす経験値」だったり「他人の視点を理解できる経験値」である必要があります。普通に自分の好きなことをして自分のペースだけで外部からの刺激もなく暮らしていると、新たな視点につながる経験値が積み上がりません。もちろんそういう受け身のペースでも稀に新たな視点を持つ経験をすることもあるかもしれませんが、時間もかかり圧倒的に効率が悪いです。それでは世の中の目まぐるしい変化にも対応できるクリエイターになることはできません。
演劇でも音楽でもアートでも、ライブや実物に触れたり体験することは、この仕事において重要だと常々思っています。
鮮度の高い新たな視点を持てる体験をたくさんしていくこと、そこで素直に感じたことを大事にしていきたいです。