2025.04.23
思い
表現の幅を広げる
先日、竹原ピストルさんのLIVEに行ってきました。
竹原ピストルさんは僕が大好きな歌手の1人です。言葉選びや、強くてやさしい、時に考えさせられるメッセージ性のある歌詞が大好きです。
初めて聞いたのは大学生くらいの時でしたかね。当時は「野狐禅」というバンドでしたが、2009年に解散後、「竹原ピストル」としてソロ活動をするようになってからも、ずっとずっと聞いてきました。
どこまでもリアルな歌詞
今でも年間100本以上のライブをおこなうなど、常にステージに立ち続け、挑戦し続ける姿勢に裏付けされた言葉たち。耳障りのいい綺麗事のような言葉は一切ありません。よくある表現をそのまま使うことに決して甘んじず、必ず自分の言葉として歌詞を紡ぐ。この姿勢はコピーライターとしても見習わなくてはいけないなと思います。
歌詞に「そうだよな」と納得したり、「何気なく使っていたあの言葉に対して、そういう捉え方もあるのか」と驚いたり、圧倒的なエネルギーに勝手に力をもらったりしながら、常にそばにいた竹原さんの言葉。10数年聞き続けてきましたが、この間ようやく念願のLIVEに行くことができました。
挑戦を終わらせるもの
いやー、圧倒されましたね。すごかった。熱かった。心が揺さぶられるどころか、ぶん投げられました。ここで想いを全て語るととんでもなく長くなってしまいそうなので、僕が好きな歌詞をいくつか紹介していく形にしたいと思います。
まずは、1つ目。
ダウンからカウント1.2.3.4.5.6.7.8.9までは、哀しいかな
神様の類に問答無用で数えられてしまうものなのかもしれない
だけど、カウント10だけは、自分の諦めが数えるものだ。
ぼくはどんなに打ちのめされようとも、絶対にカウント10を数えない
「カウント10」
この歌詞には、現役時代から今に至るまで、何度も助けられました。決して平等ではない世の中かもしれないけど、本当に全てが終わってしまうのは自分自身が諦めた時だと。
過去にとらわれず、未来をとらえる
次は、同じ言葉の「てにをは」を変えたり、言葉を反復させたりして新たな意味を与える“竹原節”の真骨頂とも言えるようなこちらの歌詞。
積み上げてきたもので
勝負しても勝てねえよ
積み上げてきたものと
勝負しなきゃ勝てねえよ
何度でも立ち止まって
また何度でも走り続ければいい
必要なのは走り続けることじゃない
走り始め続けることだ
「オールドルーキー」
この歌詞は新たな挑戦をする時にいつも思い出します。過去の功績を誇るのではなく、過去の自分と闘うくらいの気持ちで。現状に満足せず、新たな挑戦をし続ける大切さ。
言葉を“掘る”
並ぶために並んでるわけじゃない
並びをぶっちぎるためにまず並んでるのさ
ルールにのっとって ルールをのっとって一等賞
「一等賞」
これは、言葉遊びのように「のっとって」を繰り返しつつ、意味においても納得感のある言葉になっているのがすごい。同じ「のっとって」でも前に「に」をつけるのか「を」をつけるのかで意味が変わる。竹原さんはこういう言葉回しが好きだと自分でも公言しています。
人生は一度きりだけどチャンスは何度でもあるってことと
チャンスは何度でもあるけど、人生は一度きりだってこと
人生忘れちゃいけないのは結局このたった二つだけだろ
生まれついてのアンチヒーロー!
今に見てろよ、あんちくしょー!
「アンチヒーロー」
これも。「人生は一度きりだけどチャンスは何度でもある」と聞くと、そうだよなと納得して終わってしまいそうですが、言葉を反転させて、それらを組み合わせることで、さらに納得感のある言葉にしている。「アンチヒーロー」と「あんちくしょー」で韻を踏みつつ、常にミュージシャンとして野望を持っている竹原さんらしい成り上がり的なメッセージになっているのも面白いです。
オリジナリティがない人のオリジナリティ
言葉選びが独特で、いつも新たな発見があって、説得力がある。徹底的に感情や言葉と向き合って、「竹原ピストル」というフィルターを通して出てきた言葉たち。他の人には絶対に言えない独自の目線や捉え方。唯一無二。
そんなイメージの竹原さんですが、インタビューでこんなことを言っていました。
ギターは小6から始めて、ずっとTHE BLUE HEARTSさんや長渕剛さんのコピーをしていたんです。そして自分でも書きたいと思うようになったんですよね。歌詞の内容は、今挙げたお二方を足して2で割ったような感じでしたよ。モノマネというか、パクリというか。一方で、聴いたものを足して割ったような、「それ誰かが言っていただろう」みたいなことしか書けないことが、コンプレックスだったのも覚えていて。だから作詞作曲を始めてみて、かなり早い段階で「自分は生まれ持ってのオリジナリティはない人間なんだな」ってことは自覚しましたね。
“竹原節”があるじゃないですか。とインタビュアーに問われると、
それもやっぱり混ぜて混ぜてなんだと思います。ブレンドをもっと細やかにして、捻り出すというか。歌うたいになってからは、共演の方のステージを間近で見るじゃないですか。そこでどんどん影響を受けて、意識的に取り入れたり、無意識的に作用を受けたり。混ぜて混ぜて「はい、これは何を混ぜたでしょうか?」っていうのが自分なりのオリジナリティの作り方かなって思っていますね。
引用元 Real Sound (https://www.uta-net.com/interview/2109_pistol)
混ぜて混ぜて
あの竹原さんが「自分は生まれ持ってのオリジナリティはない人間」だと思っていたなんて、意外でした。
でも、この考えは、クリエイティブでも同じなのかなと思いました。「アイデアは既存の要素の新しい組み合わせ以外の何ものでもない」という言葉もある通り、自分だけのオリジナリティを求めるのではなく、すでにあるいいものをインプットして、新しく組み合わせることが大事なんだと。
そういう意味では、今年はもっといろんなものを生で感じて、積極的に影響を受けようと思いました。混ぜて混ぜて表現の幅を広げる。
ただ、僕たちがやっているコピーやデザインはアートではないので、アーティストのようなオリジナリティはむしろいらないのかもしれません。自分がしたい表現より、課題の解決が優先されるべきです。でも、自分が持てる表現の幅はあった方がいいので、いろんなものを生で感じてインプットしていこうと思いました。
本当はすべての歌詞を紹介したいくらいで、まだまだ竹原さんの魅力のほんの1%くらいしか語れていませんが、それはまたどこかで。
圧倒的なエネルギーのライブに行って、大きなパワーと大事な気づきをもらいました。ありがとうございました。